加彩牛車
葬礼のための器物を「明器」と呼ぶ。明器の字は「神明」の明で、神と生者との中間に位置する死者のための道具である。器皿にかぎらず人形(俑)、家畜、家屋、井戸や竃、架空の鎮墓獣まで様々なものが作られ(総じて「神明泥象」と称する)、生前と変わらない世界が墳墓の中に再現されたのである。
馬は軍備として重宝されたが、牛もまた農耕・運搬のために欠かせない存在であった。屋根(幌)付きの牛車は貴人の出行用とみられる。死者は付き人(俑)がいたばかりでなく、乗り物まで用意された上で死出の旅路に付いたというわけである。