螳螂
小杉放菴
小杉放菴(1881-1964)は日光の生まれ。新聞や雑誌の挿絵を描いて頭角を現したのち、展覧会で賞を獲得して洋画家としての地位を築きます。しかしその後の欧州留学で本場の油彩画に圧倒され、日本の伝統に目を向けるようになっていきました。
越前の「麻紙」を用いた作品は昭和になってから登場します。「麻紙」は滲むような微妙な風合いが特徴の紙。放菴は職人に何通も書簡を送り、自分の意に適う紙を求めました。ぼんわりとした輪郭のキノコやカマキリは、まるで昔話の一場面を切り取ったかのように素朴で、どこか郷愁を誘うような雰囲気を醸し出しています。