おきなぐさ
斎藤茂吉
「白髪翁 小さきみれば 木曾山に しみ入るひかり 寒しと思ふ 茂吉」
正岡子規に私淑し、精神科医としてつとめるかたわら歌を詠み続けた斎藤茂吉(1882-1953)。この歌は医師としての欧州留学から帰ってきた1925年、知人を訪ねての木曾行きの間に詠まれたものと思われます。身をかがめてオキナグサ(白髪翁)に見入る歌人の姿が目に浮かぶようです。この花は茂吉がしばしば歌に読みこんできたもの。初期から晩年まで、ふと思い出したかのように歌の中に登場します。郷里・山形の想い出に繋がるものがあるのでしょうか。