呉須流水文硯蓋
硯蓋とは文字通り硯箱の蓋であるが肴などを載せる皿としても用いられたという。渦巻く水の文様は江戸時代の画家、尾形光琳(1658-1716)のものがよく知られているが、どこへ流れ行くのか判然としない渦巻は宙を漂うようでもあり、眺めていると不思議な心持になってくる。半泥子は光琳の弟の乾山(陶工、1663-1743)研究でも名を残したが、その過程で琳派の装飾に学ぶものがあったのではないだろうか。
右上から左下にはしる線は金継ぎによるもの。器面のアクセントになっていると同時に、この硯蓋を「世界に一点だけの品」にしている。