桃山風椀(十客組)

北大路魯山人( 1883-1959 )

北大路魯山人といえば篆刻家であり書家でありまた陶芸家であるが、美食家としても名高い。
戦前、高級料亭・星岡茶寮で辣腕をふるい“星岡の会員でなければ日本の名士でない”とまで言わせしめた。
魯山人は極上の食材で献立を考え、職人たちを指揮して料理を作り、自作のうつわに盛り込んで客に食べさせた。
料理に最も適したうつわを妥協せず選んで用いるのが魯山人であり、そのために自ら器皿を制作した。
陶磁器が知られているが塗りの椀や盆など漆工の装飾も手掛けている。襷文にススキが配された文様は、魯山人図案のものとしてよく知られている。

魯山人は三十代半ばで古美術商を始めたが、やがて常連客に手製の料理をふるまうようになった。星岡茶寮の原型である。
当初はコレクションの品を食器として用いていたが、やがて数が足りなくなった。
しかし市井で売られているものには満足できず、料理を盛るのに値するものを自分で作るようになった。
そのうつわはまさに「用」のもの。うつわ本来の在り方といえよう。