桜花打掛蒔絵螺鈿印籠

満開の桜の木の下に打掛が掛けてあります。人物の姿は見えませんが、何らかの物語性を感じさせます。桜の花びらは研ぎ出しではなく貝片を上から貼りつけて表現されており、立体感のある仕上がりとなっています。

印籠に蒔絵で文様を描く際は、鉛筆やペンのようにはいきません。固まってしまうので、漆を塗っては段ごとの境目で切り離し、塗っては切り離しという作業を繰り返して仕上げたと考えられます。よって、木の幹や衣の線、文様などは段の境目を越えてきちんと連続しています。