二行書

夏目漱石

 「源水看花入 幽林採薬行」
 2016年に没後100年をむかえる夏目漱石(1867-1916)。東大から英国留学を経て小説家となる人物ですが、素養の一つとして漢籍にも親しみ、自作の漢詩も多く遺しました。そのほかにも正岡子規との親交から俳句も詠み、内外の美術に対する造詣も深いなど、一筋縄ではいかない人物です。
 「源水看…」は中国・唐代の詩人で則天武后に仕えた宋之問(?~710頃)の詩の一節です。渓流に分け入り薬草を摘むという俗世を離れた生活は、江戸時代の文人画家たちが描いた山水の世界観とも重なってくるものです。